すべては悪用される

私の家にある本は、ほとんどが図書館で読んでから
購入したものだ。
繰り返し読むための本で、その中に
中国の賢者である「荘子」がある。

ひとおり読んだはずなのに、この間再読していて、
「まじか、、、」と本から目を上げて、絶句した章があった。
あらためて、古典はただの古い本ではない。
書かれた時代の古さなど超越して、現代にそのまま通じ、
おもわず「なるほど」と言ってしまうパワーを秘めている。
たとえば、今年書かれた本でいまから1000年後にも
人々に読まれ続ける本は何冊あるだろうか。
限りなくゼロに近い確率になるだろう。

で、どの章に絶句したかというと、
「きょきょう篇」だ。(漢字は難しすぎて表示できなかった)
この章を一言でいうと「すべては悪用される」という章だ。

これは全部読んでもらいたいんだけど、私なりに抜粋して
書いてみる。

たとえば、盗人対策として、家の中の貴重品を金庫に入れるのは
盗人対策としては正しいけれど、
それが大盗賊になると、金庫ごと盗んでしまい、
結果として、家の中の貴重品を盗みやすく持ち運びやすいように、
あらかじめ大盗賊のために用意してしまうことになる。

賢い善人の考えたあらゆる制度や方法は、
すべて悪人のためになる。
大盗賊は、どんな物でも不正に利用するし、賢い善人が考えたもので
大盗賊が利用できないものはない。

そういうことが書いてある章だ。
思い当たる。
一番最初に頭に浮かんだのは「マイナンバー」
すべての個人情報が、1つの番号で管理されるというアレである。
まさにハッカー垂涎の情報で、
必ず情報は流出して悪用されるだろう。
まさに大盗賊のために貴重品をまとめて箱にいれる愚行だ。

聖者の教えを受け継ぐはずの宗教組織も、まともな組織が少ない理由がわかる。
大盗賊的な気質をもった者がいずれ長になって、まるまる盗んでしまうからだ。

世界に害悪を垂れ流す原子力発電所が、いまだに運用されるのは、
それで利益を得ている盗賊たちがいるからだ。

そんな目で世界を見てみると、世界中が盗まれてしまったようにすら見える。

おもえばヨガでさえ、ビジネスの道具になってしまっている。
高額なティーチャートレーニングで、インストラクターを乱造する人もいる。
瞑想でさえ、金儲けの手段になっている。
秘密のマントラを授けるごとに集金する、というやり方を知ったときは
そんなやり口があるのか、とビックリした。

しかし、そんなことは荘子がとっくの昔に予見していたことだった。
すべては悪用される。
最近、マインドフルネスが大流行だけど、やはりこれも悪用されるんだろうと
思う。

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Category: 読書

- 2016年11月30日

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