対極にある思考

 

ヨーガ・スートラというヨガの経典は我々一般人に
とっては生きる上で関係のない哲学や超能力の話が多い。
だから「一般人のためのヨーガ・スートラ」という本を書くとしたら、
省く言葉がかなり多く、けっこう薄っぺらい本になると思う。

そんなヨーガ・スートラだけど、日常生活でリアルに使える技も書いてある。
それがこれだ。

2.33 対立する思考がこれらの禁戒と勧戒の妨げとなるなら、
  対極にあることを熟考すべきである。

「してはいけないこと」(ヤマ)と「積極的にすべきこと」(ニヤマ)
を妨げるような思考、

怒りとか怠惰とか、欲望などが湧いてきて、実践が危うくなったら、
その対極にあることを考えるという技。

仏教には不浄観という肉体の醜さと儚さを考え、イメージしていくという
瞑想がある。
皮膚からは汗が出て、鼻からは鼻水、目からは目ヤニ、耳からは耳クソ。
グロテスクな内蔵に、糞尿。
これは必要以上に肉体を魅力的なものと考えてしまうことにブレーキを
かける効果がある。
けっして「嫌悪感」や「厭世観」を養っているわけではない。
肉体は綺麗で美しい、という側面ばかりクローズアップして、
欲望を募らせる心にブレーキをかけるためにそういう実践をする。

甘いものが好きすぎる人なら、甘いものの官能的な旨さばかりに
目を向けないで、甘いものを食べて太った自分や、
砂糖で歯が溶けてボロボロになるイメージで、バランスをとる。

浪費しすぎてしまうのなら、そのお金を稼ぐときにした苦労や、
あれだけ欲しかったのに、いまではなんの魅力も感じない衝動買いして
しまった品物をイメージする。

喧嘩してその人の悪いところばかり目がつくようになったら、
あえてその人の良い点をイメージしてみる。思い返してみる。

などなど。
この技法の応用は無限である。

この間は、奥さんがこう言っていた。
「なんか世の中世知辛い、みんな子供嫌いなんかね」」
今日は出会った人がみんなイライラしていて、ゆとりがなかったそうだ。

そこでこの「対極の思考」をすすめでみた。

「まぁ、そういう人もいるやろうけど。実際、そういう人ばかり見ると、
思考が偏って、世界が必要以上に「世知辛い」場所だと思えてくるから、
こう考えたら?
いままで、すごく優しくて子供が大好きな人おらんかった?」

「いた。Sさん」

「じゃあ、その人のことをイメージしてバランスとったほうがいいよ」

私も肉体労働の仕事で「なにこの人?」と思うような人に出会ったら、
いままで会ったお客さんの中で最高に優しかった華道家のおばあちゃんを
思い出して、心を人間不信から抜けださせる。

この「対極の思考」は根本的な解決にはならないけれど、
日常生活を送るのにかなり使えるオススメ技だ。

ちなみに、この技法から導き出される教訓として、
悲惨なニュースや、ゴシップなどはあまり見ない聞かないほうがいいと
いうことになる。
世界の悪いところ、人間の醜いところばかりクローズアップして見て、
怒りを養ってもなんにもならない。
刃物を振り回して人を傷つける狂人はニュースになるけれど、
見ず知らずの人を親切に助ける人はニュースに流れない。
だから世界は私が思うよりも優しい場所かもしれないし、
厳しい場所かもしれない。

思考はかならず偏りがでる。
人が一生で出会える人、経験できることは限られている。
その限られた素材も、極端に解釈されて偏りが生まれる。
絶対の真理じゃない。
だから自分の考えや世界観をあんまりまともに受け止めないに
限る。正しいかもしれないし、間違っているかもしれない。
あやふやなものだ。

 

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Category: エッセンシャルヨガ, ヨガ的かんがえ, 瞑想

- 2015年6月5日

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