生き残る判断、生き残れない行動

9.11などのテロや津波、台風などの様々な災害。

<そんなとき人はどう行動していたのか?>

そんな災害に遭遇する確率はとても低い。
病気や自動車事故で死ぬ確率のほうが高い。
しかし、極限のサバイバル状態で人がどうなるのか?と

いうことを知識として知っていることは大きな力になる。

 

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異常事態での人の行動心理が、自分が陥るであろう
心の状態がうっすらでもわかるというのは
大きな力になる。
この本は、災害からサバイバルする読む護身術だ。

まず、とても意外なことが書いてある。

たとえば、9.11のテロで倒壊したビルにいた人達。
私のイメージでは阿鼻叫喚で、
階段を駆け下りて、人を押しのけて、
大パニックで脱出したというイメージでした。
映画が作られるなら、そういうリアルな感じの演出になるだろう。

 

しかし、事実は真逆らしい。
尋常でない揺れや衝撃、
煙があるのに、
人々はぼーっとして、パソコンの電源を

落としたり、私物をまとめたりしていた

あまりのショックに人は事実を否認する

避難ものろのろ。
想定ではワンフロア30秒しかかからないはずなのに、
1分以上かかってしまう。

現実がうけいれられなくて、まるで映画の中にいるような
非現実感で、体と心が離れてしまったような感じになるそうだ。

パニックよりも、問題なのは現実逃避。
逃げずにじっとしている可能性が高い。

つまり
ショックをうけ、それが受け入れられず、
「きっと大丈夫」という楽観にしがみついた
まま死ぬ人がかなりいる。

災害に巻き込まれたとき、一番大切なのは
自分の心の統御だ。

なかでも軍隊や警察官が遭遇する、人間の心をゆがめて
行動をおかしくしてしまうほどの恐怖の章
ヨガにも通じていて、とても参考になります。

抜粋。

<第二次世界大戦中に陸軍パイロットの言葉。
航空母艦からジェット戦闘機を飛ばそうとしているとき、
頭脳に何がおこるか?

「駐機所を横切って飛行機まで歩いて行くときIQの半分を失う」>

恐怖を感じた状態では、普段通りの行動は期待できない。
恐怖は脈拍を押しあげ、脈は200以上になり、
顔は青ざめ手は震え、正常な思考力は消え去る。

普段できるような、簡単な計算すらできない状態。

そんなときにプロが使う対策も書いてありました。

<恐怖反応を扱うのに簡単な方法がある。
もっとも意外な戦術の一つは呼吸である。
呼吸法を真剣に学んだ、ひどく恐れられている銃の達人たちもいる。
どうすれば恐怖に打ち勝つことができるのを戦闘トレーナーに
訪ねると、繰り返し彼らが語ってくれたのが呼吸法だった。
もちろん彼らはグリーンベレーやFBIの捜査官に教えるときは
「戦闘呼吸」「戦術的な呼吸」などと呼んでいる。
だか基本的な概念はヨーガやラマーズ法のクラスで教えられている
のと同じである。
警察官に教える一つの型は次のとおりになっている。
四つ数える間に息を吸い込み、
四つ数える間息を止め、
四つ数える間にそれを吐き出し、
四つ数える間息を止める。
また最初から始める、それだけだ。>

その実例。

<キースはオクラホマとネバダの警官だったとき、
六回の銃撃戦で十回撃たれた。
撃たれるたびに、深くゆっくりと息を吸った。
彼はその作戦が絶対だと信じているのだ。
「そうすればとても落ち着いていられる。
過呼吸になったり、パニックになったりすることもない。
何もかもがスモーモーションで動いている気がするよ」
とキースは言う。彼が現在、障害のため四十歳で引退している。
「こう言えばいいのですよ。よし、ここで何か起こっているけど、
私はこれに対処できる。頭を撃たれたけれど、まだ生きている。
万事うまくいっている。だからまんざらでもない、と」
これほどシンプルな呼吸がなぜ、これほど強力なのだろう?
呼吸は体神経系にも自律神経系にも存在する数少ない活動の一つである。
だから、呼吸はその二つの神経系の架け橋だと、
戦闘指導教官デーヴグロスマンは説明している。
意識的に呼吸の速度をゆるめることによって、原始的な恐怖反応を段階的に縮小できるのだ。
そうでなければ恐怖反応に支配されてしまうだろう。

ストレスがマックスになる戦場で有効なものは、
日常生活でも有効だろう。
呼吸の可能性は広い。

「生き残る判断、生き残らない行動」は災害の本だけど、
人間のものを見る力が、いかにいろいろな感情に歪められ、
その影響が大きいのかを目の当たりにできる本だ。

 

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Category: 呼吸, 読書

- 2015年2月16日

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