ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件

 

コナンドイル著シャーロックホームズは
ドイルが死去しているので、新刊はでないのだけれど、
それを「正典」と仰いだ、さまざまな作家の
続編が多数存在する。

ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件も、その続編の1つで、
映画化もされている。

このミスター・ホームズ 名探偵最後の事件の特徴は、
93歳の記憶力も体力も衰えたホームズの物語だということ。
諮問探偵を引退し、養蜂業を営むホームズ。
「最後の事件簿」となっているけれど、犯罪者がいるような
事件は1つも起きない。
メインは失われていく記憶と人々。
喪失の物語だ。

探偵としての超能力的な思考力と記憶力が
失われ「探偵シャーロックホームズ」としての
自分が失われていく中で、否が応でも突きつけられる
人間としてのホームズの姿。

これは事件簿というよりかは、
自分の人生という謎を探求する老探偵の
物語だ。
そして、それはどんな難事件よりも手強く、
完全な答えが出ることもない謎だ。
ホームズはホームズなりの納得を得て、
物語は終わる。

思えば、人はみな探偵ではなかろうか。
自分の人生という謎の答えを求める探偵だ。
ある人は、仕事というものが答えだと、
夢を叶えることが答えだと、
お金が、修行が、権力が答えだと、
さまざまな最終結論をだすけれど、
人生はさまざまな方法でその答えへの安住を覆す。

私がもし仮に老人になったのなら、
人生をどう回想するのだろうか。

39歳のいま、人生を回想すると、
人生というのは、運が大半を占めるということだ。
子供たちに人生について語るとしたら、
「人生は運しだいだ」という阿呆みたいな話になるだろう。

人生は大海原に似ている。
私達ができる努力は船の帆をはり、羅針盤をにらみ
自分が進むべき方向を見張ることだけだ。
それよりも大きな外因は「風(運)」だ。
さまざまな風に波に、私の船は左右される。
どんな風が吹き、嵐がきて、波がくるかは予想できない。

私達にできる努力は、しっかりと船をメンテナンスし
帆を張り、羅針盤で進路を決めることだけだ。
これを人生に還元すると、
心身の健康管理と、自分の価値観をしっかりともって
生きるということに尽きる。

話はミスターホームズからそれてしまったけれど、
シャーロックホームズファンの私にはかなり満足できる
読書体験だった。
映画はすこしアレンジが違うみたいだから、
今度は映画もみてみようかと思う。
イアン・マッケランのホームズ、はまりすぎ。

 

ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件
ミッチ・カリン
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Category: 読書

- 2016年7月19日

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