心よりも体のコントロール

 

 

2000年以上前、ヨーガスートラが成立した頃のヨーガは、
ラージャヨーガとも言われ、いまでいう坐禅に近いものだった。
ヨーガスートラという「ヨガ大百科」的な経典には、
現在のヨガの骨格ともいえる
アシュターンガヨーガ(八支則のヨーガ)が含まれていて、

その当時からアーサナ(ポーズ)プラーナーヤーマ(呼吸の制御)が存在した。
けれど、それはとてもシンプルなもので、
アーサナは「座り方」で、プラーナーヤーマにはいまのような多種多様な
テクニックは存在しなかった。

そのアーサナやプラーナーヤーマを発展させたのが、
中世に興ったハタヨーガだ。
ハタ・ヨーガ・プラディーピカーでは、

「ハタヨーガはラージャヨーガに登るためのハシゴのようなものである」

と記載されている。
(ここでいうラージャヨーガはややこしいけど、ヨーガスートラのラージャヨーガではなく、ハタヨーガのラージャヨーガのことだ。
2つは根本的な思想が違うので、ラージャヨーガといってもスタイルが違うけれど、心のヨーガという点では一致している)
つまり「体のヨーガから心のヨーガへ」と進みやすいように
段階がついた。

最近、ハタヨーガ的な気づきがあった。

たとえばストレスで大変なとき、
ダメージを受けている心を制御しようとするのは不可能に近い。
「穏やかであれ」と心に言い聞かせても、心は動揺する。
悪い想像をするな、と思ってもつい最悪の場面が脳裏をよぎる。

想像などの「心」は物体になっていないから、とらえどころがなく
制御するのが難しい。
風に吹かれてゆらゆらとロウソクの炎の揺らめきを
止めるには炎に直接アプローチするのではなく、
風をとめればいい。

具現化された心である肉体は、心よりもコントロールしやすい。
だから、ヨーガにはアーサナ(姿勢)プラーナヤーマ(呼吸での制御)
が存在する。

たとえば危機に陥ったとき、心と体が動揺して体の中に嫌な感覚が
駆けまわる。
それが筋肉を硬めて、姿勢を歪ませる。呼吸が浅く短くなる。
その体の状態が悪循環でフィードバックして、
さらに心が動揺して、体内の状態は過剰な緊張体制になって
パフォーマンスが落ちる。

アーサナのリラックスして安定した姿勢と、
落ち着いた呼吸に体を導くと、体の状態が改善されるので、
心は自然に落ち着いていく。
しかし、ここで「心」を変えようと「緊張するな」とか
「落ち着け」と命じてみても、燃え盛る炎を手を抑えるような
もので効果が薄い。

だから、最悪の想像が頭を駆け巡り、動揺した心をほおっておいて、
まず体の状態を整える。
姿勢を正して、リラックスして、意識的に息をゆっくりと吐く。

体を整えると、心は自然と整う。

日常的にヨーガで体を整えると、それが常態となって
心も動揺しにくくなるという仕組みだ。
体を鍛えることが心を鍛えることになる。

ハタ・ヨーガ・プラディーピカーはこの本が一番わかりやすい。

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ヨーガ・スートラはこの本がおすすめだけれども、
内容が濃いので読むのに苦労する人もいるかも、、、、

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Category: エッセンシャルヨガ

- 2016年5月24日

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