苦しみの恩恵

夜中に猛烈な吐き気と下痢。
なんと昼間に食べた鮭で食中毒になってしまった。
胃液を吐くまで吐き続け、最後には胃液に血の塊がまじっていた。
体温は38.5度。
背筋が痛んで、寝ていてもツライ。
栄養補給に飲んだポカリスエットも戻してしまう
「水」以外、口に入れることができない。
生きているだけで苦しい、という経験だ。

苦しい、苦しい、なんて無駄な経験なんだ。
あまりにも苦しくて、苦しむこと以外なにもできない。
時折、思い出したように苦しみの感覚にマインドフルになるけれど、
脳がショートしていて、意識はいつのまにか苦しみに巻き込まれて、
ただ苦しむだけの物体として1日を過ごした。

そして、それが治癒して、少しづつ食べることができるように
なり、しばらくすると無駄だと思われていた「苦しみの恩恵」に気づくことができた。
日常生活が楽で仕方ないのだ。

吐き気と下痢と高熱と筋肉の痛みが無い、という状態はとてつもなく楽で、
この間まで「ちょっとキツい」と思っていた事も、なんということもない。
一言で言うと「忍耐力がついた」のだ。

忍耐力。
重要な力なのに、
なんて冴えない扱いを受けている力なんだろうか。
「あの人は忍耐力がある」というとき、言葉の中に
、雨の中でじっと耐える牛のようなイメージが含まれている。
鈍い、鈍感、そういう軽蔑的なニュアンスがある。

「忍耐力をつけるトレーニング」
なんて本があっても、絶対に売れないだろう。
でも、私の心の師ブッタは
平安な心と忍耐は最高の修行です」と経典で述べている。
自己啓発セミナーでは絶対にダサくてクローズアップされない忍耐力だけど、
人生を変えるのに、かなり高ランクで重要なパワーなのだ。

ただじっと耐える忍ぶ、というのは
なんの策もないように思える。

しかし、真に忍耐力がある人は、
あらゆる悪習慣の誘惑を忍耐することでやり過ごして、
使われない悪習慣は、寝たきりになった人の筋肉が衰えるように
消えてしまうだろう。

ただ、じっと耐えることができない事が物事を悪化させている
という側面は多いだろうし、
勉強でもトレーニングでも、すぐには成果がでないから
忍耐して地道で辛くてパッとしない時期を乗り切ることが必要だ。

普段、自分で自分を追いこむことはかなり難しい。
でも、病の時は病の苦しさが強制的に自分を追いこむ。
大病してそこから生還した人は、やはり普通の人とは違う
強靭なメンタリティをもっている。

すっごくツライ経験をした人は、
強靭な忍耐力が養われる。

あと、人への共感性も養われるのではないだろうか。
病気で苦しい思いをした人は、体調不良の人の苦しみを理解しやすい。
若い人よりもいろいろな経験をした老人のほうが、
あらゆる境遇の人へ配慮できるのではないだろうか。

病やストレスはチャンス。
忍耐力をつけるには、忍耐しなければならない苦しさが必要。
苦しいのはみんな嫌だから、なかなか伸びない力だけど、
やむを得ずに体験せざるえない生活苦は、忍耐力を伸ばす。
そう思うと、ちょっとは苦しい体験に意義が見いだせたりする。

ストレスにもいい側面があると書いてある本。
自分の思いこみ(マインドセット)に人は左右される。

スタンフォードのストレスを力に変える教科書
ケリー・マクゴニガル
大和書房
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Category: 生活を変える方法

- 2017年3月19日

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