薬の逆境、毒の順境

NHKの100分de名著は「菜根譚」だ。
古典だけあって奥深い。

たとえばこんな言葉がある。

<逆境の中にいるときは、身の周りのすべてのことが鍼(はり)や薬になり、
それで節操を砥ぎ、行動をみがいているのであるが、本人はそれに気づいていない。

これに対して順境にあるときは、目の前のすべてのことが、
実は刃や戈となって、それで肉を溶かし骨を削っているのであるが、
本人はそれを知らずにいる>

ついなんでも思うがままの順境や楽な道がいいと思いがちだけど、
それこそが肉を溶かし、骨抜きにする罠であるという深い言葉。
逆に辛い時こそが利益である。

これを活かすのならば、
順境にあるときこそ
あえて自分を追い込む必要がある。

たとえば現代社会は肉体的には順境だ。
車で移動して、快適なエアコンで体は楽だ。
まさに「肉を溶かし、骨を削る」環境だ。
あらゆるサービスがそろっている。
体なんて使わなくても生きていける。

だからこそ自ら運動する必要がある。
体を動かさないと生きていけなかった昔は、
「あえて運動する」なんて習慣は必要なかった。
でも、今はそれが必要だ。

慣れた日常生活を送るのは楽だ。
毎日決まりきったことをするのが一番ラクだ。
頭を使わずに生きていくことができる。
でも、そんな順境であえて日々「できないこと」
「新しいこと」を学ぶ習慣を持つ。

順境にいながら、あえて逆境を求める。
本能には反しているけど、平和ボケした
ブヨブヨの体をした人間にならないためには必要だ。

菜根譚

菜根譚 (岩波文庫)


Category: 読書

- 2015年10月20日

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