99%ビーガン三週間目とサラリーマンとインド人と熊と

私は会社勤めをしている。
中小企業だから、社長との距離も近い。
行事があって、社長や幹部の人、そして私のようなペイペイ
が混じって、6人くらいで食事をすることになった。
社長、幹部の方のおごりで、カレーの美味しい居酒屋に
連れて行ってもらった。
「どじょうの蒲焼き」や
「うなぎを挟んだ卵焼き」などを注文していただいて、
あとのご飯はビーガン(動物性のものを食べない)たる私は
奇跡的にメニューにのっていた「ベジタブルカレー」に希望を繋いだのだけど、
「売り切れです」腹をくくって普通のカレーを注文した。

別に肉や魚が食べられなくなって、ビーガンになったわけではない。
食べようと思えば食べられる。

社長は好意から
「今日はお疲れ様、ささやかだけど遠慮せずに食べていってくれ。
ここの料理は旨いぞ」
と薦めてくださる。

ペイペイの私は、
「実はビーガンなので食べません」とはいえない。

これはけっしてパワハラではない。
好意を無碍にしてはいけない、という問題だ。

もっと大人数で、ガヤガヤしている席ならこっそりと
植物性食品しか食べないという手も使えるけれど、
同じテーブルに相対していたら、ご好意をありがたく受け取るしかあるまい。

そういえば、過去、ペスコベジタリアンたる私(魚は食べるベジタリアン)は、
町内のバーベキューに呼ばれて、隣の席になった独り暮らしのおばあちゃんが
嬉しそうに、
「そういえば、昔、息子にこうやって肉を食べさせたことあったねぁ」などと
いいながら、私の皿に大量の肉を次から次と入れてきたときも、
黙々と食べ続けた。

食物に他人の好意が結びつくと、断ってはいけない場合もある。
という訳で、ゴチになりました。

カレーはおいしかったし、他の料理もおいしかった。
ありがとうございますとご機嫌で家に帰り、
まあ、ときどきこういう事があるのはしかたない、うふふ。
などと考えながら家についたら、
気が緩んだのか、急に吐き気がしてきて、
結局、食べたものを全部吐き出してしまった。

大量に嘔吐して、呆然としながら考える。

これは一体、なんだろう?

3週間で、腸内細菌があらかた植物性の食品を分解する
種類のものに変化して、肉を受け付けないのか?
それとも、最近、ベジタリアンの勉強のしすぎで、
精神的な拒否反応が、無意識下に刷り込まれているのか?
いや、私は吐く直前まで、私はご機嫌に歌っていた。

わからないまま、数日。
今度は、パンをいただく機会があった。
シナモンのきいたお菓子のようなパンだ。
美味そうだ、そしてお腹が減っている。
うーん、かぎりなく卵と牛乳が使われている可能性が高いなぁ、
と思いつつも、まあ、入っていてもそんな量はないだろう、と
甘い囁きに負けて、口にした。

そして、30分後。
私はまたトイレに駆け込み、嘔吐する事になった。
3回吐いて、胃がからっぽになるまで吐いた。

遅まきながら気づいた。
体が恐ろしく繊細になっていて、
動物性のものを一切、受け付けない。

もともと私は牛乳はダメというのもあるけれど、
それにしても、ここまで嘔吐するのは!

肉体のこの反応速度は、
毒物が体内に入った時と同じで、
一切、体内に残したくない!とばかりに
嘔吐してしまう。

これはなんだろう。
ビーガンのことを調べたけれど、
動物性のものを食べると、こんなに過剰反応が
おこるという情報は、私のリサーチには引っかかってこなかった。

謎を抱えたまま、家に帰って妻と話すと、
この間、食事会で肉食して嘔吐した話をインド人
生まれながらにインド式ベジタリアン(でも乳製品はとる)
のKさんに話した時の内容を教えてくれた。

インド人のKさんも、
食事に誘われて、わからないくらいに微量でも、
お肉が入ったものを口にすると後から嘔吐するそうだ。
一口食べると、体の感覚で入っているか入っていないか、が敏感にわかるそうだ。
そういうときは、一口食べてそれで止めとくといいよ、って旦那さんに伝えといて、
という伝言もあった。

Kさんは乳製品はとるけれど、
肉類は誤飲以外では、食べたことがないナチュラルボーンベジタリアン
で、彼女の経験談を聞いて、私の疑問も消えた。
これがベジタリアンの自然な体の拒絶反応なのだ。

たった3週間で、ここまで私の体は変わった。
ビーガンの世界に入ったら、急速に元いた世界が
遠ざかっていく。

ビーガンを辞める、辞めない、という選択肢が消える。
そんな気分的な軽々しいものではなくなった。

先日の食事会と、さっきのパンとで、
なおさら動物性食品はコリゴリになってきた。

昔、鯖の棒鮨を食べて、食あたりしてから鯖の棒鮨が食べられなくなった
感覚に似ている。

そんなことをするつもりはないけれど、
ビーガン化した肉体を、ふたたび肉食化させるには、
かなりすこしづつ努力しないと、嘔吐の連続がまっているだろう。

元の体に戻すには、そのリハビリを経てからでないとムリだろう。

いままで私は魚を食べるペスコベジタリアンだった時は、
肉をときどき食べても、ぜんぜん平気だった。
ここまで急激な変化をみせたのは、肉、魚、卵、乳製品を
一切とらないビーガンになってからだ。

自分の体験と、インド人のKさんの体験を聞いてから、
頭を整理すると、「ん?」と違和感を覚える情報が浮かび上がってきた。

それは22年間ベジタリアンだった女性が肉を美味しさに目覚めて、
これからは肉を食べ続けるわ!と宣言する動画だ。

テレビの企画で、肉食に挑戦したそうだけど、
嘔吐したての私からすると、
ありえない!と思う。

22年間もベジタリアン?をしていて、
いきなりこんなにバクバクと肉を食べて、体は大丈夫なんだろうか?
テレビ局の裏に食肉業界がいて、アンチベジタリアンのために
こういう番組を作ったのではないか?と疑ってしまう。

こういう事を書くと、陰謀だ陰謀だと騒ぐかわいそうな人みたいな
扱いをされそうだけど、
気をつけなければいけないのは、
マスコミの情報でも、科学者の研究でも、
しっかりとスポンサーを調べてからその信憑性を調べなければいけないということ。

コカ・コーラ社がスポンサーの研究者は、
コーラは肥満や成人病には無関係だと言うし、
食肉業界から資金を得ている心臓病学会は、
心臓病になった人むけのメニューに牛肉をつかったものを
掲載する。(アメリカでの話、詳しくは健康って何?

インド人のKさんは、最後に
「私は生まれてから肉とか魚とか食べたことないけど、
旦那さんは食べたことあるから、我慢するのが大変そう」と同情していたと
話しを聞いた妻が言っていた。

それがぜんぜん大丈夫。
昔、ビーガンの人が「体の感覚が違う」と言っているのを
聞いて、「ふーん」くらいに思っていたけれど、
体の感覚が軽くて、楽だから、それを犠牲にして
肉食に戻るメリットがわからない、というのが率直なところ。

最後に、ビーガンといっても人それぞれだから、
時折、肉を食べても大丈夫な人もいるかもしれない。
だけど、ビーガンの人の健康を気遣って、
「お肉を食べないとタンパク質が」とこっそりと食事に
肉を混ぜ込むのはやめたほうがよさそう。
あとから嘔吐するハメになる可能性が高い。

そういえば「自由への旅」で、ウ・ジョーティカ師の
師匠で、ビーガンでしかも一日一食で何十年と
健康に生きている老師が体を2回だけ壊した話が書いてあった。
それはあまりの粗食を気にした信者の方が、
こっそりと食事に豚肉を入れたのが原因で、それを食べてお腹を壊した
のが2回とのこと。

そう考えると、人間は雑食ではなく、
元々、菜食なんだなぁ。
本物の雑食動物である熊のように強力な胃酸もなければ、
肉が腐敗しないうちに排出できるほど短い腸もない。
でも、人体は環境への適応で、なんとか肉食をしている。
その努力をしなくてすむとなると、3週間もすると肉を受け付けなくなる。
人間の自然は、重力は、菜食だ。

私が熊だったら、1年ベリーと植物しか食べることができなくても、
1年ぶりに食べる鮭は、生のままバリバリと強力な牙と胃酸で
なんの問題もなく食べることができるだろう。

ときおり人間は雑食動物で、みたいな
ことを書いている人がいるけれど、それは無い。
肉食男子、女子を自認する肉食大好きな人でも、
生まれながらの姿ならば、
たとえば、サバンナにシマウマが1頭、綺麗な状態で倒れていたら、
それを食事することは不可能に近い。

内蔵を貪り食おうにも、皮膚を切り裂く鋭い爪もない。
歯も弱く、生のままでは分厚い皮膚と、太い筋肉には歯が立たない。
おまけに、日光で照らされて、腐敗していく生の肉を食べても、
腸内で殺菌できるほどの胃酸もない。
ちょっと生焼けの肉を食べたくらいで食中毒をおこす。
ネネツ族のように極寒の地でなら食べられるけど、
その変わり、生まれながらの姿では凍死するから、やっぱり肉食はムリだ。
生肉は食べられない。
そんな雑食動物が存在するだろうか?

つまりデフォルトの状態では、
人間は菜食動物、猿と同じカテゴリになる。
肉食はイレギュラーなのだ。

そのイレギュラーな肉食を常食にすると、
自然に反することになるから、
さまざまな病になってしまう。

そういうシンプルな答えが、
すみやかに菜食に適応して、逆戻りしにくくなっている
私の体が教えてくれる。


Category: ベジタリアン

- 2017年7月13日

コメントを残す

Your email address will not be published / Required fields are marked *