針の糸を通すような幸福
こんなことを書くと、引くかもしれないけれど、
今、とても幸福だ。
なにもかも揃っている。
いや、別にたいした幸福ではないけれど、
住む所があって、さほどストレスを感じない仕事があって、
妻がいて、子供もいて、みんな健康だということは、
人間関係が得意ではない引きこもり思考の私にとっては、
奇跡のような現実だったりする。
全部、おれのお陰、なんてことは思っていない。
いまここに成り立っている幸福は偶然の産物だ。
さまざまな偶然が折り重なっている。
たったささいな１つの要素が狂っただけでも、この状態には
なっていない。
さまざまな選択肢、人との出会いが産んだ針の糸を通すような幸福。
北京の蝶のはばたきが、アメリカを襲うタイフーンの原因になっている
みたいなバタフライエフェクトが、人生にもある。
以前はこんな風に思いがけない方向に人生は進展しなかった。
人生の展開の仕方が変わったのは、
ヨガに出会ってからだった。
アシュタンガヨガという肉体運動と瞑想がミックスされたヨガを
はじめてから、だんだんと運が良くなっていった。
ヴィパッサナー瞑想という観察系の瞑想を始めてから、
さらに不可思議な人生展開になってきた。
妻が呆れるほど、運が良くなった。
これは「おれは運が凄くいいんだぜ、凄いだろ」と
いうことを書きたいのではない。
最近、どうも瞑想と運の良さは関連があるのではないか、と
気づき始めたからだ。
私の幸運は、瞑想の熟達に比例している。
比喩で表現すると、人には見えない導き手がいるのではないか、と
いう気がする。
その導き手は、大きな力を持ち、その人が煩悩に塗れた心で考える
人生の目標、たとえば大金持ちになる、とかとは別に独自の目標を持ち、
つねにその見えざる真の目標にむかって、誘導している。
嵐のような大声で煩悩が叫んで強いるのに比べて、
見えざる導き手の声は、ささやき声のようだ。
瞑想をする前は、私はその声が聞き取れなかった。
けれど、瞑想のトレーニングをしはじめてから、
その囁き声が、すこしは聞き取れるようになってきた。
導き手のガイドにしたがって歩く人生は、
幸運の連続だ。
思いもしなかった支援や、出会いに恵まれる。
しかし、心が煩悩に支配されてしまった人は、
逆風に向って歩くような困難が待っている。
たとえば悪事で生計を立てて、楽して生きようなんて
思うと、遅かれ早かれ必ず吹き飛ばされる。
人それぞれについている導き手、
それをダルマという人もいれば、タオという人も
いるし、守護霊という人もいるし、
過去に積んだ善きカルマという人もいるだろうけれど、
なんと例えるにせよ、その力は個人の意志よりも強力なのだ。
その導き手に従う人生は
それを加速させるようなシンクロニシティ（偶然の一致）に恵まれる。
そして、情熱が湧いてくる。
たとえば、最近、子供の教育のためにキャンプを始めようと色々と
リサーチしている。（キャンプに行こう）
楽しくて、まったくそのリサーチが苦にならない。
加速度的に、私のキャンプの知識は現在深まっている。
そんな時、幼稚園の保育参観に行ったら、
子供が給食を食べている間に、ミニ講演会があって、
「森のようちえん」の活動をしているカメラマンの小西貴士さん
との出会いがあった。
まったくもって素晴らしい講演会で、
子供を自然の中で遊ばせる必要性を感じていた私の肩をさらに
押してくれた。
このタイミングで、この人に出会える偶然。
私はこういうシンクロをただの偶然とはとらえず、
「よし行けゴーだ」という天の声だと捉える。
それを加速させるシンクロが起こる道を歩く時は、
まったく心配ない。
人生にとって必要なことだし、
物事はまったく苦もなくうまくいく。
「子供と一緒にキャンプをすることが、人生の目標？必要？」
なんて思う人もいるだろうけれど、
人生の変化は、そういうささいな小さいことの積み重ねで変わっていく。
シンクロニシティが起こるような道は、世界が必要としていることだ。
たとえば、子供時代のキャンプの経験が子供たちの人生を変えるだろうし、
キャンプをすることで私達夫婦も変わるだろう。
その僅かな変化が、長い人生で蝶の羽ばたきのように人生を嵐のように
変えていく。
１０年もすると、思いもしない人生を生きていることになるだろうし、
思いがけない自分になっているだろう。
導かれて日々、ほんのわずか、正しいと感じることをする。
瞑想は体の発する違和感や、良しいいぞ！というフィーリングを
しっかりと聞く力を養う。
僅かな一歩。
その蝶の羽ばたきが、幸運の風をつれてくる。
