家族を養うか、自分の道を行くか、私はバーベル戦略ですが

以前は嫁に「夢見る子ちゃん」と言われていた。
自分でも、やはり以前の私は夢ばかり見て、フワフワと生きている、風に転がる藁屑のような男だったと思う。
子供が生まれたらそれが変わった。

きちんと働いて家族を養わないといけないと思った。
真人間の考えが、ちょっとづつ芽生え、
すこしづつ社会復帰のリハビリをした末に、
いまではサラリーマンとなり、サラリーをいただけるようになった。

しかし、心の中には世間離れした夢見る子ちゃんは残っていて、
そんな自分、家族のために地道に働くサラリーマンの自分を肯定できない思い、
間違って人生を生きている感覚がどこかうっすらとあった。

そんな私の思いを砕いてくれたのは関大徹老師だった。
関大徹老師は著書「食えなんだら食うな」でこう語っている。

それは若き僧侶へのアドバイスだったけれど、
身中、ふらふらしていた私にも刺さった。
いつか家族を養うために仕事をしながら仏道修行をしようかと迷っている僧侶に、関老師は語る。

<自分で自分の好きな道に熱中するものは、まず妻子というものを斥けてかかったほうが無難であろう。
好きなこともやりたい、妻子も食わせねばならぬというのは、それこそ二足のワラジであり、どだいムシの良すぎる注文である。
わが身一つ、いつ野垂れ死にしても満足という覚悟でなければ、それは、
脇目もふらず自分の道を歩んでいるとはいえず、裏返していえば、
妻子を養うということは、それほど値打ちがあるということになる。
すくなくても、男の一途さを放棄せねば妻はめとれぬ、子は設けられぬ>

家族を養うか、好きな道を放棄するか、この二択である。
本物の禅僧の言葉は私を肯定した。
家族を養うということは、そのほどの大事なのだ。

好きなことをして生きるなら、結婚しちゃ駄目。

<好きなことをして生きる>というのは、夢のある言葉だけど、
それを突き通すには、血を吐くような、さまざまな犠牲を払わないといけない。
リスクのあるところにしかリターンはない。

それでも私のような往生際の悪い男は、好きなこともしないと生きていけない。
完全に仕事と家庭に専念すると、私のような心根がアウトサイダーのものは、
社会から外れたところに養分を吸収する根っこがあり、
その供給が断たれて、生きていることが難しくなる。

人に谷と書いて「俗」
人に山と書いて「仙」

俗人になるか、仙人になるか。

この二択を選択しきれない私が生きる道を
教えてくれたのはナシーム・ニコラス・タレブだった。
(それにしてもずいぶん色んな人に著作を媒介として
アドバイスもらっているなぁ)

ナシームさんは投資家で、リスクの専門家だ。
私が大好きな著作「反脆弱性」で提案されているのが、
バーベル戦略だ。

たとえば投資だったら、8割は債券のような安全性の高いものに
投資して、残りの2割を物凄くリスキーな、新興企業の株式なんかに
投資する。
リスキーな2割が吹っ飛んでも、8割は無事に残る。
しかし2割の新興企業が、じつは未来のマイクロソフトだったら、
利益の上限はない。
リスクを限定して、しかも利益は限定しないというやり方だ。

それを現実世界に応用すると、
8割は安定した仕事をする。そうして、生活の土台をしっかり
しておいて、残りの2割で好きなことをするというやり方になる。

私は人生の10割を家族と仕事に投入せずに、8割にしている。
どうやって2割を削ったのか?
それは人間関係になるだろう。
酒も飲まない、タバコも吸わない、友達もいない。
それで時間が浮く。
仕事を終えて、家に帰った私は、家族以外とは無縁の人になる。
浮いた2割の時間で瞑想、運動、読書、作文などと好きに過ごしている。
変人であることをもちろん知っている嫁は、それが私に必要不可欠である
としって、その時間はちゃんと私を放牧してくれる。

好きを仕事に。

じつは以前、私はヨガインストラクターをして、好きなヨガをして
生きていた。(実力不足ですごい低収入だったけど)
その当時に比べても、いまの生活は遜色なく好きなことをして
生きている感覚がある。

それは安定した仕事があって、心置きなく自分の山に籠もって
「仙人時間」を過ごせるからだ。

ヨガインストラクターをしていた時期は、ヨガは好きなんだけど、
生活の不安はすごくあった。
どうやって集客できるか、ばかり考えていた。
(ぜんぜん無理だったから、ただ悩んでいただけだったんだろう)
好きなヨガも、飯の種になってまったく不純だった。

でも、今は好きなことはぜんぜん生活に絡まないので、
まったくやりたい放題、純粋に実践できている。
最高だ。

だから「好きなことを仕事にしたい」という人はまず、
きちんと安定してそこそこストレスなく働ける仕事を
確保する必要がある。
その上で、なにかを切り捨てて、時間を確保して
好きなことをする。

そういえばブレイディみかこさんがイギリスの格差社会を
話す番組で、イギリスの俳優、演劇界は上流、中流階級の
子息ばかりで、下流となるワーキングクラス階級の人間は
ほとんどいないと語っていた。

人間の仕組みとして、ちゃんと安定した生活ができないと、
心の余裕はなくなり、創造性は低下して、その「好きなこと」
どころじゃなくなるのだ。

おすすめはバーベル戦略。

もしも、2割の好きなことが大好評で、
世間からもう仕事をやめてそれだけに専念してくださいよ、と
要望が感じられるようになったら、10割好きなことで生きたら?
ということになる。






どちらの本もおすすめ

 








Category: 生活を変える方法, 読書

- 2020年5月7日

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