週刊リクニュース

8月20日
違いのわかる男


この時期、散歩から帰ってくると愛犬リクは

「ハアハアハアハアハアハアハアハアハアハアハア」

とそのまま心臓発作おこしそうなくらい、呼吸が乱れ、

口から舌がだらりと垂れ下がり、大変気の毒な状態になるのです。

あまりにも不憫なので、2階にある私の部屋にあげて

エアコンのスイッチオン。

狭い部屋なので、みるみるうちに涼しくなる室内で、

リクの呼吸はだんだん穏やかになり、体はくつろいで

横たわり、そのままスヤスヤ熟睡するという極楽じゃー状態を

満喫します。

デカイ犬のぬいぐるみのようにピクリとも動かないリクを

起こさないように私はゲーム開始。

なんのゲームかというと、お盆に高校のときの友人と酒を

飲んだのですが、そのとき話の流れで高校時代の無為に過ごさせた

悪魔の遊びの話になりました。

それが
「麻雀」

中学、高校とかなりの回数、徹夜で麻雀を打ち、その魅力は

麻薬のようで、まさに亡国の遊戯!

リクの話からはそれるのですが、

麻雀にだんだんと嵌っていったリク兄青年は、

友人と打つだけじゃ物足りなくなり、

当時、
自称「麻雀の鬼」のO君と一緒に高校終わったあと、

郵便局でのバイトで稼いだ金を持って

雀荘デビューを果たしたのでした。

「おれは強い、、、、、桜井章一にも勝てるかもしれない」

と雀荘に入る前のO君は20年無敗と呼ばれる裏プロなんぞ屁でもねえ、

発言をし、私も「こいつはもしかすると、、、、」と快勝の予感を

募らせたのでした。

片町にある「T」という、比較的看板がかわいらしい雀荘を選んで

乗り込んだ我々二人は、礼儀正しい店員さんに案内されて、

初めて雀荘のなかに足を踏み入れたのでした。

衝撃が待っていたのです。

我々の案内された麻雀台には、赤いワイシャツで金のネックレス、

凶悪な人相の
ヤク○にしか見えないオッサンが座り、

店の人は我々二人に「丁度メンツが足りなくて困っていたんですよ!」と

慇懃に言い、「残りの一人は店の者が入りますから」と

店長らしきにこやかな男が、電話をしだした。

「ごめん、ちょっとメンツ足りないんだけど、起きてくれる?
うん、うん、すぐ来て」

と誰かを呼んだのです。

アカシャツのヤク○オヤジと我々は席について待つことに。

その時点で、私は喉がからからで、挙動不審な感じに仕上がっていました。

自称最強のO君も、「桜井章一なんて目じゃねえ」と

いう強気は消え去り、ただの田舎の高校生に戻って、

羊のような目で虚空を見ていました。

登場した店員というのが、なんか熊みたいに毛深い男で、

どうも寝起きらしく、相当にテンションが低く、

というか正直機嫌が悪そうで、私は深い後悔のマリアナ海溝に

ずぶずぶと沈んでいったのでした。

勝負事は、ビビッてしまったらダメです。

私とO君は、まったく言いところ無し、それどころか、

自称麻雀の鬼のO君は、牌を両手で触って

「おい、あんちゃん、麻雀は右手だけでするもんだ。左手をそうやって、
牌にそえておくと、
スリ変えのイカサマ
できるだろうが!」

とヤク○オヤジの怖い注意を受けたのでした。

私も何気なく左手を置いたりしていたので、さっと

左手をひっこめてうつむきました。

というか、そんなイカサマ技を身につけていたとしても、

ヤク○みたいに見えるアナタ様相手には絶対に使いません、、、

「すいません、ごめんなさい」とO君青い顔で謝り、我々は萎縮したまま

麻雀を打ちました。O君の哀れなほどのへこみようは今でも

思い出せます。

「あっ、すいません、それポンです、、、、」と

か細い声でいった様子や、口を半開きで魂が抜けたような顔で

「放銃」していた様子、たぶん、O君はO君で私の挙動不審の

麻雀スタイルを記憶しているのでしょう。

私は2万、O君は1万5千円ほど負けて帰りました。

高校生の2万はかなりの大金です。

口から霊魂でそうでした。

私はそれいらい、麻雀を避けるようになり、O君も

私相手に麻雀の話しをしなくなりました。

ええ、いまの用語でいうと「トラウマ(精神的外傷)」を負って

麻雀を止めたのです。

それが、高校時代の友人と酒を飲むうちに麻雀が

したくなり、ゲオで中古の麻雀ゲームを買って、最近は

暇を見つけて麻雀力の向上に励んでいるのです。

はあはあ、長い脇道でした。

この話はこんだけで終わります。

麻雀ゲームで快勝した私は昼飯を食べるため、

リクをおこして、茶の間に行きました。

茶の間もエアコンが効いています。

しかし、リクはしばらく茶の間をウロウロしたあげく、

がらっと襖を開けて、階段を上り

2階の私の部屋に戻っていきました。

2階の部屋はエアコン消してあるので、かなり暑いのですが、、、、、

そうです、リクは一階の広い茶の間のエアコンの効きよりも、

2階の狭い私の部屋のエアコンのほうがより涼しいと

判断して、さらに涼しい私の部屋に戻っていったのでした。

エアコンをつけっぱなしにしていれば、

それは正しい判断だったのでしょうが、

リクは間もなく、「ハアハアハアハアハアハアハア」

いいながら階段を下りてきました。

リクは快適を追求する姿勢に妥協はないのです!

失敗してもつねにチャレンジなのです!

って、話でした。

はあ、なんだろう、このまとまりのない感じの終わり方は、、、

なんのオチもない、私も正直にそう思っています。












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