1月16日
電話男
秋葉系の青年の恋愛を描き、感動を巻き起こした「電車男」
それに負けないくらいインパクトがあるのが、
今回ご紹介する「電話男」です。
「電話男」とは、私が、このあいだ目撃した逸材。
見つけたとき、全身が泡だったとです。
それは、昼下がりの図書館。
最近、浅田次郎の「天国への100マイル」を読んで、いたく
感動した私は、つぎなる浅田次郎本を探していました。
<このプリズンホテルって面白そうだ、蒼穹の昴はないのか?>
本を片っ端から手にとったとき、声が聞こえました。
「いいから!おまえはこなくていい!私にまかせておきなさい!」
おっさんの声、書棚が邪魔して姿は見えないのですが、方向から
言って、椅子のある雑誌のブースにいるようです。
「こなくていい!こなくていいぞ!わかってくれ!」
相手の声が聞こえないので、おっさんはあろうことか、
図書館で携帯をつかい、大声で喋っているようでした。
<うむむむ、モラルがなってねぇーな、モラルが>
と腹がたってきた。
どんな奴か、顔を見てやる。
と私は、本を持ったまま、書棚を抜けて、
声の方向を見ました。
いた!
ソファのうえに半分倒れそうなほど寄りかかったおっさん。
「わかったか?こなくていいんだぞ!」
私はおっさんと目が合いそうになり、とっさに書棚に隠れました。
見てしまったのです。
おっさんの両手には携帯なんてなかった。
鯖のような目で、天井を眺め、青白い顔で、
必死に頭のなかにいる人を説得しているのでした。
こっ、怖ええええっ!
恐怖電車には及ばないものの、充分に狂気を感じさせる方でした。
よかった、ガンをつけたりしなくてよかった。
目があう前に撤退したから、安全なはずだ。
と私はいそいそと本を選び、受け付けに行きました。
受け付けをしているとき、おっさんは、
「ロシア大革命ィィ!」
と大声で叫ばれていました。
私は無言で、図書館を後にしたのでした。